夫婦の形は、いろいろ。100組の夫婦がいれば、100通りの形があります。
そしてそれは、ときに恋愛映画やドラマよりも、ドラマチックだったり、波乱万丈だったりします。
アモーレ大学では、ときに、実在する夫婦のリアルな実態を取材し、お届けをしていきます。
実在する夫婦の赤裸々な話からは、男女の出会いのコツや、パートナーシップの築き方、トラブル回避の方法など、学べることが多いはず。
今日は、都会(大阪)暮らしから、30歳でいきなり「漁師の嫁」となり、現在は2児の母のM子さん(37歳)にインタビューさせていただきました。
漁師の嫁になった経緯は?
漁師の生活って?
漁師の嫁の良いところ、不便なことは?
都会の男子と漁師の男子、違いはある?
お話を伺いました。
◇「M子さんは、大阪生まれの大阪育ち。ご主人は年下で、もともとはIT系のお仕事とのこと。それがどうして“漁師の嫁”に?」
大阪で働いていた時に職場で出会った人が、今の主人でした。
主人の両親の親元が田舎の漁師町で、先祖の家もそこにあったことから、主人自身「いずれ戻って漁師として働きたい」と考えていました。
出会って数年経ったときに、主人のお父さん経由で定置網漁を主とする会社で働けることが決まり、2月に主人だけが移住して生活を開始。その後数ヵ月後に私が移住して、田舎で結婚式を挙げることになりました。
◇「IT系の仕事から、いきなり「漁師になりたい」という思いだけで田舎町に移住を決意したご主人。「結婚して漁師町に移住する」と言ったときに周りの反応は?」
都会ではあまり身近に聞くことのない漁師という職業に就く主人ついて移住するということに、友人達は驚いていたし、「都会っ子で、デパートで買い物大好きなアンタが大丈夫か~?」と心配されました。
家族は、直接私には言わなかったけど心配していたと思うし、実家暮らしだった私が急に遠くで住むことになり、不安もあったと思います。ちょうどその頃、市立高校の美術教員のオファーがあり(M子さんは美大出身)、タイミング悪く断ってしまったけれど、家族には「もうしばらく都会で働いてもいいんじゃない?」と遠回しに言われたこともありました。
◇漁師をやったことないのに、「漁師になる」と言って大阪を飛び出した夫に、不安はなかった?
正直、ピンとこなかったです。
でも、私の中で、“やりたいことがあってチャンスもあるのに、否定的に考えてやらない”という生き方は嫌なので、夫に対しても反対はしませんでした。
◇都会に住む男性と、漁師の男性、違いってありますか?
まったく変わらないですよ。プライベートでは、みんな都会の人と同じようなことしています。
最近は都会からアイターンで就職している人も多いですし。
あと、漁師って、意外ときれい好きだなあと思いました。
◇都会で仕事する夫と、夢をかなえて漁師になった夫に、違いは感じますか?
夫自身は変わらないです。ただ、性格的に田舎町で暮らすのが合っていると思います。
◇「漁師の嫁」というと、朝が早いのかな?というイメージですが、実際、生活はどんな感じなのでしょうか?
漁師の出勤時間は確かに早い!!ので、必然的に私も朝早く起きてご飯用意して…という流れになります。夏場は4時半出港なので3時過ぎに起床、冬場は6時出港なので4時半頃に起床です。
漁師だけでなく、田舎の人はたいてい皆早寝早起きです。私は朝が弱いので辛いです。
とは言っても、個人漁師さんなど(延縄漁業をしている人など)は夜中1時起床などなので、私のところは遅いほうです。
漁師の家族としては、大きな事故やケガがないかをいつも心配しています。死亡事故もあるくらい危ない機械を船に積んでいますし、猛暑の時も荒波や雪が降っている時や雷がなっている時でも出港しているので。
◇漁師の嫁になって、「ここが大変だった!」というのがあれば教えてください。
全体的に見たら、漁師の嫁として大変なことはあまりないです。現在はみんな普通の「サラリーマン漁師」ですし、毎日出勤して夕方までには帰宅しています。休日は少ないですが、日によっては昼までに勤務が終わる時もあるので、プライベートの時間もあります。
◇では、「漁師の嫁のここが良い!」というのがあれば教えてください。
漁師町であり主人も漁師なら、ほぼ毎日その日獲れたての魚を食べられますし、それが普通になっています。こっちに来てから、都会では食べていなかった魚(マンボウなど)をよく食べられるようになりました。
◇M子さんのSNSの写真などを拝見すると、魚料理が本当に上手ですよね。お魚をさばくのとか、いつからそんなに上手になったんでしょう?もともとできてたんですか?
魚の調理の仕方は、夫に教えてもらったり(漁師は船の上で魚をさばいて朝ごはん代わりにしている)、妊娠するまで地元漁協の加工場で数か月アルバイトをしていたので、抵抗なくできるようになりました。
◇M子さんは現在2児の子育て中ですが、お住まいになられている漁師町では、同じような子育て世帯は多いんでしょうか?それとも少ないのでしょうか?
うちの町だけかもしれないし、地方の問題が浮き彫りになっているかもしれないし、それはわかりませんが、男性の未婚者が多いんです!
もういい歳(40~50歳代)なのに独身男性、けっこういます。主人の会社でも、適齢期(20~30歳代)で結婚している人があまりいなく、子供がいるのも主人を入れて4人だけなんです…(20~30歳代は14~15人います。)
自分の子と同じ保育園に通うママ友さんなどとは自然に話すことになりますし、主人の会社ではない個人漁師さんのママさんとも仲良くさせてもらっています。
やっぱり同じ保育園のママさん等と交流が増えています。
◇都会の生活が恋しくなったり、戻りたくなったりはしませんか?
都会はかなり恋しいです・・・。30年間過ごした場所だし、そのときはすごく嫌だったごみごみした街もラッシュ通勤も、今では恋しいぐらいです。
友達もみんな大阪にいるので、仕事帰りや休日に飲みに行ったり、買い物したり・・・が今は皆無ですから。
ですが、今はこっちでもママ友や知り合いの輪が広まったし、幸い私がいる田舎町は観光地として注目されているので、主婦でもビジネスチャンスが多数あります。これからもっと楽しくなりそうな気がします。
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今回、お話をお伺いして一番印象に残ったのは、「“やりたいことがあってチャンスもあるのに、否定的に考えてやらない”という生き方は嫌なので、夫に対しても反対はしなかった」というM子さんの言葉。
なにかやりたいことや夢があっても、「そんなのうまくいくわけない」「やりたいけど、お金もないし、知識もないし・・・」と自分で自分を否定して、あきらめてしまう人は多いと思います。
また、恋人や家族、友人がなにかにチャレンジしようとしたとき、「そんなのうまくいくわけないって!」「やめときなよ!」と否定やダメ出しする人も・・・。
M子さんのように、恋人の夢に対して反対や否定をせず、信じてついていける女性は、とても素敵です。もちろん、夢にチャレンジするご主人も。
男性は、自分を信じてついてきてくれる女性は、一生大切にしようと思うし、裏切れないもの。
M子さんのお話からは、漁師とその嫁の生活の実態だけでなく、夢にチャレンジする大切さ、そして男女のパートナーシップにおいて「相手の夢や思いをむやみに否定しない」「相手を信じる」ことの大切さも、改めて学ばせていただきました。
執筆者/黄本恵子(アモーレ大学心理学部コミュニケーション学科教授)
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