夫がいるにも関わらず、他の男性と関係を持ってしまう・・・。
そんな女性は世間に決して少なくないようです。
既婚女性はいかにして不倫の恋にハマり、その恋はいったいなにをもたらしてくれるのでしょう?
不倫の恋を経験した既婚女性のSさん(38歳)にお話を伺いました。
『不倫の恋』のはじまりは?
Sさんは、知人の紹介で知り合った大手企業に勤める5歳年上の夫と、30歳で結婚。32歳で息子を出産しました。現在は、子育てをしながら、在宅でできる電話相談員のアルバイトをしています。
Sさんの不倫相手は、10年ほど前に勤めていた会社の、元同僚で同い年の男性・Y氏です。
勤めていた会社は、業績不振により支店が閉鎖となり、SさんもY氏も含め、ほとんどの社員が退職を余儀なくされました。
しかし、その会社のメンバーは仲が良く、10年以上経った今でも、たまに飲み会や忘年会が開催されます。
Sさんも、育児の合間を見て、参加できるときは参加していました。
Y氏とは、一昨年の忘年会で、2年ぶりに再会しました。
「以前、Yくんと一緒に働いていたときは、恋愛感情は皆無だった」というSさん。
なぜなら、その当時、Y氏は結婚が決まっていたし、Sさんにも彼氏がいました。
気さくで聴き上手のY氏は、とても話しやすく、仕事や上司の愚痴だけでなく、恋愛相談もしていたそうです。仲の良い男友達のひとり、のような感覚でした。
それが、2年ぶりの再会で、どうして不倫関係に陥ってしまったのでしょう?
Sさん「久しぶりに逢う彼は、ちょっと疲れて見えました。近況を聴いてみると、『実は、離婚したんだ』と彼は言いました。奥さんと子ども2人と離れて、今は一人暮らしをしているそうです。タバコを寂しそうにふかす彼に、私は今までの彼とまったく別人のような印象を受けました。」
ちなみに、Y氏の離婚の理由は、「仕事ばかりで私と向き合ってくれないあなたと一緒にこれから先やっていくつもりはない。あなたへの愛情はもう微塵もない」と妻から一方的に言い放たれ、話し合いをしようにも取り合ってくれなかったそうです。
その後、その飲み会の後、SさんとY氏は、LINEのやり取りを頻繁にするようになりました。
不倫の背景にあった家庭の事情・・・姑からの同居攻撃、セックスレス。
Sさん「ちょうど、夫とのコミュニケーションがうまくいっていない時期でした。
夫の母(姑)から同居を迫られていて、それに対しての回答を濁したり誤魔化したりしていると、ひどい嫌味を言われたり口攻撃をされました。上司と部下、指導者と選手など、パワハラ問題がよくマスコミで取り上げられていますよね。私が受けたこの仕打ちも、嫁と姑という立場の差を利用したパワハラだと私は思います。
夫も私を少しかばってくれたらいいものの、基本的に母親に弱いので、なにも言ってくれないし、それが本当にストレスでした。
また、私たち夫婦は息子を産んでから、セックスレス気味でした。私は2人目がとても欲しかったので積極的に夫婦生活を持ちたかったのですが、夫から夫婦生活を拒否されることも多々ありました。
YくんとのLINEの内容は、何気ない雑談から、夫とのコミュニケーションや子育ての相談もしました。彼とのやり取りは、私の日常に花を咲かせてくれました。」
そして、SさんとY氏は、2人で飲みに行く約束をします。
飲みに行ったその日から、2人の“秘密の関係”は始まりました。
どちらかが誘ったというわけではなく、居酒屋を出た後、自然とY氏が一人で暮らすマンションに足が向かったそうです。
不倫と家族関係
それからSさんとY氏は、たまさかの逢瀬を重ねます。2~3週間に1回ほどのペースでした。
週末に、「友達と飲みに行ってくる」と夫に言って、Y氏と逢っていました。夫はまったく疑っていなかったそうです。
Y氏の仕事は平日が休みなので、夫を仕事に、息子を幼稚園に見送った後、平日の昼間に逢いに行くこともありました。
Sさんの胸に、罪悪感は、それほど芽生えませんでした。
Sさん「まさか自分が誰かに恋をする日、誰かを恋い焦がれる日がまた来るなんて、思ってもみませんでした。彼と過ごしていると、自分が女として愛されている、必要とされているという実感が湧きました。罪悪感よりも、幸せの気持ちの方がはるかに勝っていました。」
Y氏は、「離婚してから、会社と家の往復で、子どもと離れて暮らすつらさと寂しさから、しなくてもいい仕事まで引き受けて、忙しさで自分を紛らわせていた。Sちゃんとこうして逢えることで、人生に新しい楽しみができた。」と、Sさんに言ってくれていたそうです。
彼と逢うという楽しみができたおかげで、Sさんは、夫や子どもに優しくできることが、多くなりました。
姑の同居攻撃も、前ほどストレスに感じなくなりました。
Sさん「どうせどれだけがんばったって、嫁と姑が分かりあえるなんてできっこない。私ひとりストレスを抱え込んでいてもしんどいだけ。同居攻撃なんて笑い飛ばしてやろう。そして、いざとなれば、こっちも強く言ってやろう。怖くなんかない!とまで思うようになりました。」
また、周りのママ友にどんどん2人目・3人目ができていく中、2人目がなかなかできないことがとても苦しく、夫とのセックスレスにも悩んでいたSさんでしたが、『私にはYくんがいる。Yくんと逢えるという楽しみがある』と思うと、2人目を諦めることができました。
Y氏との関係が続く間、『夫との離婚』を考えることはなかったそうです。
Sさん「確かに、『Yくんともっと逢いたい、一緒にいたい』とは毎日のように思いましたが、夫と離婚してYくんと一緒になることは、まったく現実的じゃないな、と思いました。それにYくんはバツイチで、子どもと定期的に逢い、養育費も払っています。『結婚はもうコリゴリだ』と常々言っていましたし。」
夫との結婚生活を壊す気はない女と、結婚は二度としたくない男。
不毛としか言いようがない関係の2人ですが、2人で過ごす時間は、それぞれに幸せなひとときをもたらしていたのは事実です。
そんな2人の関係は半年ほど続き、やがて終焉を迎えることになります。
いったいそれは、どのような形でもたらされたのでしょうか?
恋の終わりは、呆気なく。
終わりは、突然、それも呆気なく訪れました。
Sさん「彼の仕事がとても忙しくなり、連絡が少なくなりました。私からばっかり連絡するのも嫌なので、彼からの連絡をちょっと待ってみることにしました。
でも、一週間待っても、何も連絡が来ませんでした。
それまでは、一週間に2~3回はLINEが来たり、電話をしていたのに。これはなんかあるぞ、と、なんとなく思って。
思い切って、『元気??』とだけLINEでメッセージを送りました。
なかなか既読がつかず、次の日に既読はつきましたが、返信ナシ。
そしたら、案の定、2日ぐらいして、夜中に彼からLINEが入りました。
『好きな人ができました。なので、もう特別な関係として会うつもりはありません。』って。」
Y氏からそのメッセージを受け取ったとき、Sさんは、なんとなく予想していたものの、「とてもショックを受けた」そうです。涙は出ませんでしたが、さすがにその日は一睡もできなかったと言います。
Sさん「彼の相手はきっと、同じ会社の女性だと思います。2~3か月前に新しい社員が何人か入った、と言っていたので、その社員の一人ではないでしょうか。
アラフォーで夫もいて、子どももいる私より、いつもそばにいてくれる独身の女性のほうが、あの人にとって絶対に良いに決まっています。
頭では分かっていても、悔しいし、せつない。
彼には、『おめでとう!良かったね~。Yくんの幸せを心から願っています』と、LINEを送りました。
そう言うしか、ないですよね。」
たとえばこれが、不倫ではなかったら、Sさんにももっとやりようがあったかもしれません。
Y氏の心が離れないように、Y氏の心に隙間ができないようにできたことはたくさんあったでしょうし、「好きな人ができた」と言われたときに、Y氏を責めたり怒りをぶつけたり、泣いて正直な気持ちを打ち明けることができたかもしれません。
しかし、不倫の間柄では、それは無理です。まして、Sさんは家庭があり、それを壊す気など、毛頭ありません。対して、Y氏は、バツイチといえど、独身です。
Sさん「実は、私自身も、彼との先の見えない付き合いに、少し疲れが出ていました。なので、これが頃合いだったのかもしれません。彼のことは大好きだけれど、私は彼のことを幸せにできない。そのことがいつしか、彼との付き合いを続けていくうちに、重りになっていました。」
そう言いつつも、Y氏から別れのメッセージを受け取ってからしばらくは、Sさんの胸は悲しさと喪失感でいっぱいだったそうです。絶対に来るはずがないのに、彼から連絡がまた来ることも期待していたと言います。
今回、Sさんが取材に応じ、不倫の恋の一部始終を語ってくれたのは、「今まで誰にも打ち明けられなかった想いを打ち明けて、悲しさと喪失感に終止符を打ちたかったから」だと言います。
この恋がSさんにもたらしてくれたものがあったとしたら、それはなんなのでしょう?
私の最後の質問に、Sさんはこう答えてくれました。
Sさん「別れはとてもつらいですし、彼には正直うらみつらみを言って罵りたい気持ちもありますが、誰かに恋する気持ち、そして女として愛される喜びを味わえて、私はとても幸せでした。また、Yくんとの付き合いを通して、Yくんというクッションを置くことで、私は家庭の大切さを改めて知りました。夫に対しても前よりも愛情を持てるようになりましたし、ちょっとのことは許せる気持ちの余裕ができました。姑の同居攻撃も、私の接し方が変わったからなのか、夫が裏で話をつけてくれたのか、いつの間にかなくなりました。」
(まとめ)Sさんとのお話を終えて
不倫は、社会的に許されないことです。
しかし、Sさんのお話をお伺いして、『不倫は悪』とは断言しがたいものを私は感じました。
恋心は抑えようと思って抑えられるものではなく、それはいつどのタイミングで訪れるか分かりません。
家庭内のトラブルや問題で悩み苦しんでいるとき、寂しい思いを抱えているとき、必要とされていないと感じるとき・・・。そんなときに自分を癒してくれる、そして自分を求めてくれる存在がいたら、気持ちが揺らぎ、傾いてしまうこともあるでしょう。
どんな状態のときも毅然とした態度で、自分を見失わず、常に『正しいこと』を選択できる・・・世の中はそんな強い人間ばかりではないと思うのです。
また、Sさんは、不倫相手との付き合いの中で、姑や夫に対するストレスが軽減され、家族により優しくできるようになりました。
つまり、Sさんの不倫の恋は、社会的に許されない家族に対する裏切り行為ではありますが、家庭内にプラスの影響もあったのです。
もちろん、不倫は、Sさんのようにきれいに終われない場合のほうが多いでしょう。
パートナーの不倫や浮気を容認できるという人は男性・女性ともきわめて少なく、それを知ったときのパートナーのショックは計り知れないでしょう。離婚、あるいは訴訟問題などに発展することも多々あります。
そして、不倫の恋は、やがて必ず終わりを迎えます。そのとき、心に大きな傷を負うことは間違いありません。
不倫の恋は、しないで済むなら、しないほうが良いです。
しかし、もし不倫の恋に図らずも落ちてしまったのなら、
1.パートナーには絶対に気づかれないように配慮すること(家庭、家族を第一にすること)。
2.不倫は「いつか終わるもの」「いつか終わらさなければいけないもの」ということを頭に入れ、終わるときはひっそりと、静かに幕を閉じること。
これら2つは必ず念頭に置いておくことは、最低限、必要なように思います。
それができれば、その恋は、長い結婚生活を円満に過ごすためのスパイスとなり得るのかもしれません。
執筆者/黄本恵子(アモーレ大学心理学部コミュニケーション学科教授)
3万人を超える人の悩みを解決するコーチ&カウンセラーとして活躍。 2010年、その経験を活かしてコミュニケーション心理スキルを紹介する、コミュニケーションライターとして独立。主に家族間(夫、子ども、姑、実家)のコミュニケーションの改善や人間関係の悩みを解決するコラムを執筆している。〔ブログ〕
2018年6月2日、『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)に出演。
2018年8月16日、『ビビット』(TBS系)に出演。
・米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー
・一般社団法人日本聴き方協会認定シニアインストラクター・認定シニアカウンセラー
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