結婚生活は、『新たな人間関係』の構築を意味するものでもあります。
自分の両親や相手の両親、きょうだいや親戚…。
みんな仲良く円満に、適度な距離感で付き合っていければいいのですが、そう上手くはなかなかいかないようです。
実際、この新たな人間関係の構築に失敗し、結婚生活に亀裂が入ってしまう家庭は少なくありません。
特に、親との密着関係には注意が必要です。
今日は、親との密着関係により結婚生活が破綻した方々の例を元に、結婚したら考えるべき親との付き合い方についてお伝えします。
親との密着関係により結婚生活が破綻した2例
1.妻の実家依存により離婚した30代男性
崇人さん(仮名)は、3年前に、実家依存だった妻と離婚しました。
崇人さんの妻は、結婚当初から実家に帰りたがることが多かったそうです。
新居も、妻と義母の強い希望で、実家近くのマンションを購入しました。
結婚して一年経った頃、妻が妊娠。そこから妻の実家依存は加速していくことになります。
「体調が悪い」という理由で実家に泊まることがしばしばあり、一週間以上帰ってこないこともありました。
そして、出産後、妻は実家に「里帰りをする」と言います。
里帰り期間は2ヶ月ほどでしたが、「自分が『早く戻って家族で一緒に暮らそう』と説得しなければ妻はもっと実家に居たかもしれない」と思うそうです。
里帰り後も、何かにつけて崇人さんの妻は実家に帰っていました。
崇人さんの妻は、自分の実家にしょっちゅう帰るのに、崇人さんの実家の方にはあまり行きたがりません。崇人さんの両親が孫の顔を見に来るときは、不機嫌そうに、イライラしている様子が見て取れました。
妻が実家に帰っている間、崇人さんの食事は用意されておらず、崇人さんは自炊をするか、遅くなった時はコンビニなどで買って済ましていたそうです。
お小遣い制だったので、「食事代の分、お小遣い上げてくれないか」と崇人さんは妻に思い切ってお願いしました。
が、妻はそれを拒否、それどころか馬鹿にした態度で「あなたが安月給だから悪い」と言ってきたそうです。
カッとなった崇人さんは妻に思わず怒鳴ってしまいます。そこから激しい喧嘩に発展。妻は子どもを連れて家を飛び出しました。
行く先はどうせ実家だろうから、心配はそんなにしていなかったという崇人さん。
妻と子どもを迎えに行く気力もなくしばらく放置していたら、お小遣いを上げて欲しいと言ったこと、そして妻を怒鳴ったこと、妻と子どもに会いに来ないことに対し、崇人さんは義母からも責められます。
妻と話し合うことになりましたが、妻からは謝罪の言葉は一切ありません。相変わらず崇人さんを責めるようなことばかりを口にしてきます。
「妻は、いつだって僕を加害者にして責めるのが得意なんです」…崇人さんはそう言います。
子どものことはもちろん可愛く、愛情を持っていますが、「子どもには絶対に自分がついていなければ」という使命感のようなものはありません。むしろ家庭における自分の存在意義が見出せない状態です。
妻、そして妻の実家とのコミュニケーションに疲れた崇人さんは、妻に「もう無理だ。離婚しよう」と告げます。
そこからさらに話し合いを重ね、数え切れないぐらいの嫌な思いをし、やっと離婚に至ったそうです。
2.夫のマザコン&ファザコンで離婚を考えている20代女性
理恵さん(仮名)は、現在一児の母。子どもは2歳です。
親戚の紹介で知り合った5歳年上の男性とスピード結婚をしました。夫の実家は自営業を営んでおり、夫は2代目の社長。
人柄も良い夫で、結婚が決まった時は、家族からも友達からも「すごい良い男性見つけたね!」と口々に言われました。
ところが、夫はとんでもないマザコン&ファザコンでした。
まず、結婚当初から、義母から夫の携帯にしょっちゅう電話がかかってきます。そして夫は、ときたま、理恵さんに対して、「理恵もなんか話して」と携帯を渡してくるのです。
最初は「これも嫁の務めの一つかな」と思って快く対応していましたが、そのうち不満がくすぶり始めます。
そして、「別に話すことないからいい」と断ると、夫は不機嫌な表情をして、こうつぶやいたそうです。
「僕の母親は、君にとっての母親でもあるんだよ。ちゃんとコミュニケーションを取ってくれないと。」
また、夫は、義父から呼び出されると、理恵さんがご飯の用意をしていてもすぐ駆けつけます。夫は義父に逆らえない人だったのです。
そんな風にして義母や義父と連絡を頻繁に取り合っているのに、夫はよく義両親と食事をしたがります。
理恵さんがしばらく食事会に顔を見せないときは、義母から嫌味を言われることもあるそうです。そんな時、夫は理恵さんをかばうそぶりもなく、何食わぬ顔をしています。
子どもが産まれてからは、義母と義父の面倒くささは増しました。待望の初孫なのは分かるのですが、しょっちゅう家に押しかけてくるのです。
子育てや教育方針の細かいことまで口出しをしてきます。
挙げ句の果てには、子どもが一歳の誕生日を迎えた頃、「こんな狭いマンションで暮らしてたら子どもがかわいそう。そろそろこっちに戻ってきなさい」と、義母は夫の実家に住むことを要求してきたのです。
夫も、義母の要求に特に抵抗を示しません。
義母の言葉を適当にスルーしていたら、何度も何度もことあるごとに言ってくるようになりました。
理恵さんは精神的に限界だと感じ、ついに半年前に夫に「同居はしたくない。同居するなら離婚する」と告げました。
夫は慌てふためいて、「とりあえず子どもが小学校入るぐらいまではここで暮らすって言うから」と理恵さんに提案してきたそうですが、義母に「同居はしない」ときっぱり言い切ることまではしていないようで、義母は相変わらず会えば同居攻撃を理恵さんにしてきます。
理恵さんの胸には、夫に対する愛情はもうありません。
理恵さんは、最近、離婚問題に詳しい友人に、真剣に離婚の相談をしているそうです。
結婚後に意識したい『親との付き合い方』とは?
結婚後は、それまでと同じではなく、パートナーという存在がいることを加味して自分の親とも付き合っていくことが必要になります。
相手の親とも自分の親とも良い距離感で付き合えている家庭は、円満なところが多く、家族の結束も固いイメージです。
結婚後は、男女ともに以下のような点に気をつけて親とコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。
1. 頻繁に親に会ったり自分の実家に入り浸らない
男性も女性も、結婚後は自分の親とは一線を引いた付き合いを意識することが大切です。
頻繁に親と会おうとしたり、実家に入り浸ったりはしないよう注意しましょう。
女性は、産前産後などしんどい時期を支えてもらうのはありだと思いますが、どこかで線引きをして、「これ以降は親に甘えないで自分たちで生活をする」という覚悟を持つことも必要だと思います。
2.親よりパートナーの気持ちを最優先する
結婚をすれば、相手の親を「おかあさん」「おとうさん」と呼ぶことになります。
とはいえ、義両親を本当の親のように感じるようになるまでには、相当な期間、そして双方の努力と根気が必要です。
自分にとっては大切な両親でも、パートナーにとってはついこの間まで他人だった人たちです。
そのことをしっかり認識し、パートナーが自分の家族と接する必要がある時は、パートナーの気持ちを最優先に考えて行動しましょう。
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パートナーが実家依存でも、マザコンやファザコンでも、全く気にせずパートナーの親と付き合い、家庭の絆も作れる人も、中には存在します。
でも、そんな人はごく少数だと思うのです。
夫婦で理解し合い、助け合えば、実家より居心地の良い空間を作ることは可能です。
そして、自分の親とも相手の親とも良い関係を築くことも可能です。
そこを目指していきたいですね。
執筆者/黄本恵子(アモーレ大学心理学部コミュニケーション学科教授)
3万人を超える人の悩みを解決するコーチ&カウンセラーとして活躍。 2010年、その経験を活かしてコミュニケーション心理スキルを紹介する、コミュニケーションライターとして独立。主に家族間(夫、子ども、姑、実家)のコミュニケーションの改善や人間関係の悩みを解決するコラムを執筆。〔公式サイト〕
・米国NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー
・一般社団法人日本聴き方協会認定シニアインストラクター 認定シニアカウンセラー
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