リアル「帰宅恐怖症」男性の話から考える、パートナーシップの在り方

「帰宅恐怖症」が、家族間・夫婦間の新たな問題として話題に上ることが多くなりました。

妻の態度や暴言に恐怖やストレスを感じ、自宅に帰ることができない「帰宅恐怖症」。

今日は、実際に帰宅恐怖症だった男性に、「どうして帰宅恐怖症になったのか?」「具体的に妻のどんな言動に大きな恐怖やストレスを感じたのか?」など、お話を伺いましたのでシェアいたします。

お話を伺ったM氏は、現在38歳の会社員です。妻との間に、小学生と幼稚園の2人の子どもがいます。

「M氏が帰宅恐怖症になったのは、いつからでしょう?」

そうですね・・・。帰宅恐怖症になったのは子どもが産まれてからですが、思い返せば子どもが産まれる前からも「家に帰りたくない」「妻と会話したくない」という思いを抱くことは多々ありました。

「“家に帰りたくない”と思ったとき、どんな行動を取っていたのですか?」

妻と顔を見合わせなくて済むように、会話をしなくて済むように、わざと終電で帰ったりしていました。その日わざわざしなくてもいいような仕事を、わざわざその日にやって時間をつぶしたり、職場の仲間を飲みに誘ったりしていましたね。
そうやって終電で帰っても、妻が起きていて待ち構えられてたときもありましたが・・・。

「具体的に、奥様のどんな言動が、ストレスや恐怖になっていたのでしょう?」

まずは、愚痴ですね。たとえば、ママ友とのトラブルとかを私に愚痴ってくるんです。その他、子育てのストレスとかを私にあたってくることもありました。どれも私にはどうしようもないこととか解決できないことなので、そういうことを聞かされるのが、本当にストレスでした。

後、私の妻は機嫌が悪いときが多く、そういう機嫌の悪いときは、家に入った瞬間からすごい空気なんです。なんていうんですかね、ピリピリ、イライラ、どんよりとした空気っていうんですか、そういうのがすごく伝わってくる。

「帰ってきた場所、間違えたかな?」「ごめんなさい、もう一回会社に行って仕事してきます」と言って引き返したくなるようなすごい空気感なんですよ。

「M氏は、そんな奥様に対して、普段どういうコミュニケーションを取っていたのですか?」

私の状態が良いときは、愚痴を聞かされたり、あたられたりしても、ある程度「はいはい」と聞き流すことができていました。ただ、私も仕事のことでイライラしているときや疲れているときは、妻の話に対してダメ出しとか批判とかしてしまうときもあるんです。そうすると、うちの妻はすごく気が強いので、もっとやっかいなことになるんです。変に拗ねられたり、ちょっと言っただけなのにものすごい勢いで口攻撃してきたり・・・。

なので、とにかく普段からなるべく会話をしないよう、避けていました。

後は、とにかく基本的に家のことも子どものこともお金のことも、妻の言う通りにしていました。

「言い返したり、反論したり、意見をしたりすることは普段からあまりなく、とにかく会話を避けていたということですね。そして、表面上は奥様の言う通りに従っていた、と。」

はい。普段から言いたいことはあっても、「自分さえ我慢すれば丸く収まる」と思ってやり過ごしていました。「はいはい、なんでも君の言う通りにすればいいんだろう」という自己犠牲的な気持ちも強かったと思います。

■「“自分さえ我慢すれば丸く収まる”、“なんでも君の言う通りにすればいいんだろう”・・・そういう気持ちで奥様と接し、会話を避け続けて、夫婦関係はどうなりましたか?」

ある日、離婚を告げられました。

 

 

 

 

 

 

 

「離婚を告げられたとき、どう思いましたか?」

「ええ!?まさか、自分が!!?」という思いでした。夫婦関係はとっくに破綻していましたが、それでもまさか離婚を告げられることになるとは、夢にも思ってませんでしたから。

「離婚の話が出て、どういう話し合いをされたのでしょう?」

私は、子どものために、そして世間体のことも考えて、離婚は避けたかった。なので、妻に説得を試みました。ですが、何を言っても妻の離婚への意思は変わりませんでした。「あなたとはもうやっていけない。」の一点張りで。

今考えてみれば、離婚を告げられても仕方ないと思いますね。薄氷の上を歩いているような、とても危うい夫婦生活でした。

「今現在、M氏はどういう生活をされているのでしょう?」

離婚をして、今は一人暮らしをしています。養育費を払い、基本的に週に一回は子どもたちと会っています。

「M氏のような帰宅恐怖症の男性はたくさんいて、家族や夫婦をとりまく新たな問題として話題になっています。解決策はあると思いますか?」

確かに、私の周りにも、かつての私ほどじゃないにしても、妻に恐怖やストレスを感じて帰りたくないと感じている男性は多いように思います。

まず、夫側は、妻の話を「ただ、聴く」ということが必要かと思います。男は問題解決志向なので、愚痴や悩み事を聞かされたら、「解決してあげなくちゃ」と思います。でも、女性はきっと、解決してほしくて言っているわけじゃないんですよね。ただ聴いて、共感してほしい。それを男は理解しないといけませんね。後は、感謝の気持ちを日ごろから伝えることも大切だと思います。

妻側は、「夫に対して攻撃的な言動や、突っかかるコミュニケーションを止めること」。夫に対してこういうコミュニケーションを取ってしまうのは、きっと「もっとかまってほしい」という心理からなんでしょうけど、このようなコミュニケーションは、男にとってすごく大きなストレスになるんです。

***

今回、M氏のお話をお伺いして思ったのは、帰宅恐怖症は、夫婦のどちらか一方が悪いというわけではなく、「双方にそれなりの原因がある」ということです。

妻側が行う攻撃的な言動も、夫側の逃避行動も、どちらもいい大人が行うコミュニケーションとは言い難いものです。

妻側が攻撃的な言動を取ってしまうのは、夫に対する「甘え」や「依存」から。
そして、夫側が逃避行動を取るのは、「怠慢」からきているのではないでしょうか。

このようなコミュニケーションは、かつては愛し合い、分かりあった者同士だからこそできるものと言えますが、ずっとこんな状態で夫婦生活を続けていて、良いことが起こるはずありません。

女性は、「最近、夫の帰りが遅い」「夫が会話を避けている」と感じたら、自分の言動で夫になにかストレスを与えていないか?を振り返って考えてみて、攻撃的なコミュニケーションをせず、できるだけ冷静に穏やかに話をすることを心がけてほしいと思います。明らかに不機嫌なオーラをまとうのもNGです。

また、男性は、妻から逃げ続けるようなことは止めるべきでしょう。その先にあるのは、離婚や家庭崩壊です。M氏の言うように、「ただ聴いて、共感する」ことや、「感謝の気持ちを伝える」こと。そして、「妻や自分の気持ちと真剣に向き合って、正面から話し合う」ことも、してほしいと思います。

 

執筆者/黄本恵子(アモーレ大学心理学部コミュニケーション学科教授)

 

 

 

 

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