バツイチの僕が好きになったのは45歳の既婚女性〜結ばれた直後に届いた別れのLINEに戸惑って〜

イラスト:新倉サチヨ

ふとした瞬間に、昔すごく好きだった人の面影や言葉が頭をよぎることがありませんか。

胸の内にしまっておいてもいいけれど、その人を美化しすぎたり悲しみが恨みに変わったりすると心が不安定になりかねません。美しくも苦しい強烈な恋の記憶は「博物館」に寄贈してしまいましょう。当館が責任を持ってお預かります。思い出を他人と一緒にしみじみと鑑賞すれば、気持ちが少しは晴れるでしょう。ようこそ、失恋ミュージアムへ。

45歳。バツイチ。4LDKの家に一人暮らし。妻子がある日突然にいなくなった

「最初は独身だと聞いていたのに、付き合い始めてすぐに夫と別居中だとわかりました。『やっぱりあなたとは付き合えません』と言われてしまい……。あれはなんだったのか、いまだに謎です」

ここは東京・渋谷にあるファミリーレストラン。日曜日の夜だからなのか若い客で溢れており、入り口には行列ができている。今回、失恋エピソードを聞かせてくれる会社員の竹山徹さん(45歳)は約束の時間より早めに来て、席を確保して待っていてくれた。

子どもの頃から柔道で鍛えているというガッシリとした体型の徹さん。2年前に離婚をして、現在は4LDKの自宅で一人暮らしをしているらしい。昨年に起きた小さな失恋という本題に入る前に、離婚という大失恋を聞いておくことにしよう。

「8年間の結婚生活でした。ある日、妻は娘を連れて突然にいなくなっていたんです。僕とケンカするたびに親の背中に隠れるような人でした。彼女の父親は常識的な人なので、離婚の話し合いは義父と進めました。その間、彼女はずっと泣いているだけ。『ダメだな、こいつ』と思って気持ちが冷めましたね」

徹さんは浮気やDVをしたことはない。しかし、一度は愛した女性を「こいつ」と表現するのはちょっといただけない。高校時代から男子寮に入って男臭い自我が確立している徹さん。「洗濯物のたたみ方ひとつにもこだわりがある」奥さんとは相性が良くなかったのかもしれない。子どもが生まれてからは口喧嘩が増えたと振り返る。

「夜に残業してから21時頃に帰って来ると物音で赤ん坊が起きてしまうから困る、と言われました。だから一人でも入れる飲み屋を探して、飲み歩くようになったんです。週に3、4回は外で飲んでから帰っていましたね」

21時頃に帰って来ないで、という奥さんの発言は、裏を返せば「もっと早くに帰って来て家事や育児を助けて」というヘルプサインだったのだと思う。徹さんがそれを見逃して飲み歩くようになったとき、奥さんの心は離婚の方向に定まったはずだ。彼女が「突然にいなくなった」のは徹さんだけの見方に過ぎない。

まさかの同い年。はるかに若く見える中川翔子似の美人との出会い

徹さんの母親は別の見解を持っている。そもそも徹さんには「男としての可愛げがない」と鋭く指摘。何でも自分でやれてしまう徹さんは会話をせずに自己完結してしまう傾向が強く、奥さんは家族としてのつながりや女性として大切にされている実感を得にくかったはず、というのだ。身近な女性ならではの厳しい意見といえる。

このように不器用なところがある徹さんだが、人恋しいという気持ちはある。良き相手がいたら再婚をしたい。だからこそ、店主が話し相手になってくれるような飲み屋に通っていた。ある合コンサービスを教えてくれたのも飲み屋のマスターだった。

「ネット上で登録すると、運営会社が一人では行きにくいような有名な飲食店を予約してくれて、参加すると自分と同じ独身の男女が一緒に食事できる仕組みです。ずいぶん若い女性が来たなと思って話してみたら、なんと僕と同い年でした。タレントの中川翔子似の美人です。バツイチで、前の夫との間に成人した2人の娘がいる、という話でした。後からわかったことですが、彼女は再婚をしていて小学生の息子がいます。そして、2番目の夫とも不仲になって別居中だというのが現実のようです」

彼女を仮に翔子さんと呼ぶことにしよう。別居中とはいえ既婚の翔子さんが合コンサービスを利用するのはルール違反である。しかし、現実のネット婚活の場には翔子さんのような利用者は少なくない。前の恋人や配偶者との関係をきちんと清算する前に、不安や寂しさに負けて次の相手を探してしまうのだ。または単なる暇つぶしという感覚なのかもしれない。

もっと美人は他にいる。でも、そばにいて違和感がなく、ずっと一緒にいられると感じた

徹さんは正真正銘の独身であり、自分もバツイチなので離婚歴のある翔子さんに違和感はなく、自分が打ち込んできた野球の話で盛り上がることもできた。翔子さんが学生時代に野球部のマネージャーをしていたらしい。

「その場に来ていた全員でLINEを交換しましたが、やり取りが続いたのは祥子さんだけです。池袋に勤務していると聞いたので、『池袋西武あたりで昼飯でもどうですか?』と誘いました。どちらかが『やっぱり合わないな』と感じた場合でも、昼ならば1時間程度で切り上げられますから。他の女性と会ったときも初回はそのようにしていました」

武骨な雰囲気の徹さんだが、この話にはデリカシーを感じる。相手の女性としても、いきなり夕食やドライブに誘われるよりも恐怖心を持たずに済むだろう。ネット婚活のように自己責任で赤の他人と会う場合はなおさらだ。

ランチ場所は西武百貨店内の寿司店にした。ネイルサロンで働いているという翔子さんは初対面のときよりも落ち着いた印象だったと徹さんは振り返る。1時間だけ楽しく会食し、次の約束もした。今度は鉄板焼きが食べたい、と翔子さん。ただし、小さな子どもがいるので夜の時間は空けることができないという。ここで翔子さんは既婚者で息子もいることが明らかになったが、徹さんはすでに彼女のことが好きになっていた。できることなら彼女と再婚したいと思った。

「理由は言葉ではなかなか言い表せません。確かにキレイな人ですが、もっと美人は他にもいます。そばにいて違和感がなく、ずっと一緒にいられると感じたんです」

次は初めて夜に会うことができた。やはり翔子さんの要望で焼肉を食べに行った。お酒も入ったので、できるだけ重くならないように気を付けながら徹さんは告白をした。

「好きになっちゃったから、付き合わない?」

翔子さんの答えも「ああ、いいよ」とあっさりとしたものだった。その日は手をつないで帰り、次のデートでは池袋のラブホテルで結ばれた。

後悔して何とかなるならば後悔する。何ともならないので次にいくしかありません

「彼女とは初めて、でしたが緊張することもなく、普通に楽しめたと思います。変なことをした覚えはまったくありません。でも、その直後にLINEが来て、『やっぱりあなたとは付き合えません』と言われたんです。動揺していたので、努めて事務的に『わかりました』とだけ返信しました」

これこそ「突然」の別れである。徹さんには悲しみではなく疑問が募った。なぜフラれたのだろう。自分が何をやらかしたというのか。彼女は単に遊びのつもりだったのか。

「原因がわかっていたら引きずっていたかもしれません。いや、20代の頃だったら原因がわからなくても気持ちが残っていたでしょう。後悔して何とかなるならば後悔しますけど、何ともならないのはわかっているので次にいくしかないと思っています。僕自身が離婚を経験して、養育費を払っている立場なので、既婚者を深追いすると面倒なことになりそうだという気持ちもあります。そうやって自分にストップをかけているのかもしれません」

徹さんは翔子さんの連絡先をLINEから削除した。それでも彼女から何らかの形でまた連絡が来たら断る自信がないと明かす。やはり未練はあるのだ。

「新しい相手ができるまでは思い出してしまうでしょう」

謎の多い美人というのは妙に気になる存在である。しかし、出会い方からして翔子さんには誠意や潔さは感じられない。寿司と鉄板焼きと焼肉を食べて、同世代の男性を「味見」することだけが目的だった、という感想を第三者としては持ってしまう。

新しい恋を探す徹さんを筆者は応援したい。そのために、徹さんには1つだけアドバイスがある。女性を崇めたり貶めたりすることなく、対等な人間として尊敬すること。また、尊敬できそうな女性を親しくなることだ。

弾むような会話ができなくても構わない。自分が相手の立場だったらしてもらって嬉しいと思うことを実行すればいい。尊敬と感謝に基づく信頼関係を少しずつ積み上げるのだ。男同士の友情は育める徹さんなら、きっとできる。

※登場人物はすべて仮名です。

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大宮冬洋(おおみやとうよう)

1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。

2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。自主企画のフリーペーパー『蒲郡偏愛地図』を年1回発行しつつ、8万人の人口が徐々に減っている黄昏の町での生活を満喫中。月に10日間ほどは門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験しつつ取材活動を行っている。読者との交流飲み会「スナック大宮」を、東京・愛知・大阪などで月2回ペースで開催している。

著書に、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)などがある。

公式ホームページ
https://omiyatoyo.com

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